鉄の棒をひたすらひっぱり続けて40年、ついに世界最長記録をもたらしたことで話題になったnimsのクリープ試験。材料の強さや耐久性をはかる地味な研究に光があたった瞬間でした。
ただひっぱっているだけにみえるかも知れませんが、このクリープ試験、驚くほど多くの工夫と苦心がなされているのです。ちょっとその中身をのぞいてみましょう。
nimsの世界最長記録は、それまでのドイツ ジーメンス社の最長記録356,463時間を2011年2月27日に更新して、2011年の3月14日まで行われました。試験時間は356,838時間でした。
試験材料は、発電所などのボイラーや圧力容器などにつかう炭素鋼鋼板で、直径1cmの丸い棒です。ひっぱりの力は約2,360kgf*。400℃という高温に保って、1969年の6月から試験が開始されました。
40年たってもちぎれなかった世界最長記録の鉄の棒は、およそ5パーセント変形していました。この、わずかなひずみをクリープ試験は非常に高い精度で測定しているのです。
世界最長記録をつくったときの変形スピード(これをクリープ速度といいます)は、元の長さに比べ、1時間に100万分の3パーセント伸びています。これがどのくらい小さいものであるかを考えてみましょう。私たちは成長するにつれて少しずつ背が伸びて行きますが、その速さを目にすることはできません。1年たっても大きいときで数センチ。1時間にしたらほとんど変化しないといっていいでしょう。クリープの速度はこうした背の伸びる速さの、何と100分の1以下なんです。